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訪問看護の質と訪問頻度

訪問看護の教科書はたくさんありますが、あまり述べられていない「構造」のお話。
がん患者さんの訪問看護は「自律を支援する仕事」と言うことができます。そのため、患者さんの生活を邪魔せず、思うような体調を維持できるように支援することが重要となります。

 

では訪問看護はどのくらいの頻度で行けば良いのでしょうか。その根拠は何になるのでしょうか。糸口となるのは訪問看護の目標設定です。

 

当ステーションでは看護計画の目標を3つに分けて、①改善/解決を目指すケース、②維持を目指すケース、③病状が進行してもソフトランディングできることを目指すケースとして整理しています。


①改善/解決を目指すケース

例えばストマケアの手技獲得や血糖コントロールなどがそれにあたります。

ある時期は定期的に、あるいは集中的に訪問し、患者さんが手技や対処方法が獲得できるようになったら訪問頻度を減らしつつ、経過次第で訪問終了とすることができます。

 

②維持を目指すケース

例えば脳血管疾患の後遺症や慢性呼吸不全などに対する訪問看護がそれにあたります。

脳血管疾患で生じた麻痺のある患者さんや慢性呼吸不全の患者さんの入浴介助や清潔ケアなどは、介護ヘルパーさんでも行うことができます。

ただ、ここで重要なことが「異状を早期発見すること」「悪化やリスクを予防すること」が看護師ならではの視点であると言えます。

皮膚トラブルや拘縮の予防、労作時の呼吸状態の変化や感染徴候などを早期発見することが看護師ならではの視点であると言えます。そのため、定期性が必要と言えます。

 

③病状が進行してもソフトランディングできることを目指すケース

がんの終末期などは基本的に病状は進行するものと考えます。人によって違いはありますが、いずれ症状が増悪し、できなくなることが増える時期があります。

そういったときに「できなくなったことをどう補うか」「できなくなっても困らない・慌てさせない」ことが看護師の役割になります。そのため、図のように状況に応じて訪問の頻度を増やしていく必要があります。

 

最近のネガティブなニュースに『過剰な頻度の訪問看護』について話題に挙がることがあります。こういったニュースについて思うことは、訪問看護の頻度がその目標に対して効果を伴っているのか、1回の訪問看護の質と費用対効果をどう評価していくのかが検討されていないことに原因があると感じています。

 

実は訪問看護ステーションにも施設基準というものがあります。病院や病室であれば施設基準は重要ですが、患者さんの自宅でケアする訪問看護の基準は、ハードではなくソフトの部分あるいはしくみの部分で構成されるべきではないかと思います。

 

訪問看護の質において、構造が及ぼす質の検証が不足しているのではないかと考えています。その構造の中には、訪問頻度や看護計画・目標設定に関する議論があまりにも少ないように感じています。在宅看護学の研究者とは、このような視点で議論・検証をしていただけないかと思っています。

 

さらに、これから20年先の未来では人口減少と共に訪問看護師も減少します。費用対効果を追求し訪問看護師というリソースの有効活用を目指していかなければ、訪問看護のケアの偏在にもつながることになるのではないかと考えています。

たくさんの在宅看護研究者と議論していきたい内容です。(賢見卓也)