「看看連携を考える会」を作った

通院治療中のがん患者さんは、矛盾した環境の中におかれています。

 

たとえば外来がん治療は
・体調やデータが悪いと治療できない

・重い副作用は自宅で出現する

・自宅には看護師はいない

そのため

・自宅での副作用のケアがうまくいかない

 

ずっと以前であれば、がん治療は「入院中」に行われていたため
・副作用も入院中に出現した

・副作用のケアは病棟の看護師が行った

つまり、医師・看護師が患者さんの苦痛を把握しやすい環境だったと言えます。

 

環境が後退したという意味ではなく、むしろ治療が進歩したことによって別の課題が生じたと考えるのが妥当だと思います。その課題に加わった、さらなる課題が、高齢がん患者さんへの治療です。

 

ただでさえ大変ながん治療は、高齢の方にとってはさらに影響が大きくなります。

治療による身体的な負担は、理解力を低下させ心理的にも不安にさせる傾向があります。

1人暮らしの高齢者、高齢者ご夫婦世帯、子どもさんが近くに住んでいないケースなど、高齢者をとりまく環境は、人の支えが少ないことが当たり前となっています。

 

これらの課題に対する「 解決策は、通院治療している高齢がん患者さんに対して訪問看護師が自宅でのケアを行う 」ことです。私がこの対策に着想を得たのは2019年ごろ訪問看護の機会においてでした。

 

このような取り組みの資料を探したところ、その2年前の2017年にすでに調査を開始し、臨床の課題と取り組みを先取りするような研究者がたった1人いました。東京慈恵会医科大学の岩田尚子先生です。

https://researchmap.jp/n_iwata/research_projects/13912822

 

私の勉強不足で文献や資料が見つけられないのかと思っていたのですが、そうではありませんでした。取り組んでいる研究者や、気づいている専門家がほとんどいませんでした。

 

課題はさらにさらに続きます。

縦割り、セクショナリズムの課題です。がん治療中の患者さんのことは、「①外来看護師」が知っています。病棟の末期がん患者さんのことは「②地域連携/退院支援看護師」が知っています。通院しなくなった末期がん患者さんのことは「③訪問看護師」が知っています。

同じ病院内でも①~②の日常的な連携はありませんし、②~③の連携も退院時のみです。ましてや、①と③の看護師さんは、まず接点がありません。

 

あちこちの病院にヒアリングを続けている間に、熱意をもった看護師さんは各現場で奮闘していましたが、熱意や技術ではなく、むしろ構造的な課題が最も大きな課題だと感じるようになりました。

 

「看看連携を考える会」は、病院の外来看護師や専門看護師と訪問看護師が、同じ課題を共有し同じ課題に取り組むための『意見交換の場』を作ることによって、組織を跨いでフレキシブルなケア体制を構築していくための取り組みです。

 

どこの看護師も与えられた仕事をすることに手一杯です。しかし看護師は患者さんに直接的なケアの部分で、もっとクリエイティビティを発揮するべきだと思っています。

がんを専門にする看護師の皆さん!疲れている暇なんてないぞ!一緒に考えましょう!(賢見卓也)